なんとかして欲しいカタカナ語と和製英語1
日本でよく見かける間違った英語のサイン
現在の日本には実に様々な英語のサインがいたるところに見られます。
ここで言う「サイン」とは、看板や貼り紙など、なんらかの媒体に表記された文字のことを指します。
「サイン」(Sign)の正しい意味をくわしく知りたい方はこちらをご覧ください。
その中には間違った英語が堂々と使われているものも多く、まさに外国人にとってはVOW天国(*1)の状態になっているとも言えるでしょう。
今回はそんな日本でよく見かける英語の誤表記について書いていきたいと思います。
Take Free
間違った英語の代表選手で、これだけ色々なところで色々な人に間違いだと指摘されているにも関わらず、いまだによく見かける「Take Free(テイクフリー)」。
当時作っちゃった在庫がいっぱい残ってるからなんでしょうかね?それともこれだけテイクフリーと言う文字をあちらこちらで見かけていると、それが正しいと思い込んでしまっているのでしょうか?
Freeは形容詞。Takeは動詞なので、後に形容詞をつけることができません。どうしてもTakeの後にフリーと言う単語をつけたい場合は、Freeの副詞Freelyを使うのが正しいという事になりますが、これもあまりナチュラルではないので、英語では単純に「Free」の一言で書かれることが多いです。
そしてちなみにtakeは基本「他動詞」(目的語が必要)として使われるので、そこも「Take Free」をおかしな英語にしている要因の1つです。
「フリーってモノを持ってけ!」っという感じでしょうか?(笑)
なので、もしこのようなサインを正しく書くとしたら
X Take Free
まぎれもなく間違いです。「フリーってモノを持ってけ!」ってなに?
△〜X Take freely
もしtakeの後にfreeを使いたいなら副詞にする、という例という意味で「△〜」としてますが、これも目的語(itなど)が抜けているので間違いです。
文法的に正しくするには「Take this freely」ですが、これも「タダで」という意味が薄れ「自由な方法で持ってけ」という感じで、ナチュラルではありません。
○ (It's) Free
基本はこれ!カッコ内の「(It's) 」も省略して、「Free」の1単語のみが英語圏内で圧倒的によく見られるサインです。
○ Free - Take One!
次によく見られるのがこれだと思います。
○ Take It. It's Free.
「It」というのが「one」よりややシックリ感が薄れますが、「takeには目的語が必要だよ」という例で、決して間違ってもいません。
○ Complimentary
個人的感覚ですが、Complimentaryはやや何かのオマケに付いてくる感(ホテルの無料朝食や飛行機での飲み物など)があるので、なんの見返りも求めないでそれ単体だけを持っていけるフリー・ペーパーに使うには若干の違和感を感じます。
○ Free to Take
「無料でどうぞ」を英語で一般的に表現するフレーズなので、サインなど使われることもありますが、それほど多く使われているワケでもない気がします。
のようになります。
「Free」と1単語で表現するのが圧倒的に自然でもっとも見られるサインでしょう。1単語で済むんだから、なぜワザワザもう1単語加えて間違った英語にしてしまうのでしょう?と思ってしまします。
Close(閉店)
「閉店」と言うサインを使えばいいと思うのですが、やはり英語の方がおしゃれに見えるからでしょうか?ほとんどの店がその「Close」と言うサインを使用しています。
しかしこれも実は間違い。正しくは「Closed」クローズドです。 今度アメリカのドラマや映画などを注意して見てみるとすぐにわかると思います。どれも「Closed」になっているハズです。
これは「close」クローズという単語が、「open」オープンと言う動詞の反対語で使われることから混乱されているものと思われます。
The store opens at 8:00. 「 店は8時に開く。」
The store closes at 10:00.「 店は10時に閉まる。」
「open」と言うのは「開いている」と言う形容詞にもなります。
The store is open. 「店は開いている」
しかし「close」と言う単語は主に動詞のみで使用され、同じスペル(close)で形容詞として使用される場合、発音は「クロー『ス』」になって、「近い」と言う意味になってしまいます。(*2)
The store is close. 「店は近い。」
よって、The store is open. に対して、「close」を使ってその反対の意味の「店は閉まっている」とするには、実は「店は閉められた」と言う「受け身」にしなくてはいけないのです。
このことは「おばかさんダリオの話すための英文法」(以下「おばかさん」)でも紹介されている「色分け」で見てみるとより分かりやすいと思います。(動詞は赤。形容詞は形容詞はオレンジで示しています)
赤とオレンジで見分けづらいって?いえいえ。そこがポイントなんです。
The store is open.
The store is closed.
さて、「おばかさん」でも 説明していますが、Be動詞の後には基本、名詞か形容詞が来ます(副詞が来ることもある)。
このことを踏まえて上の2つの文章を対比してみましょう。
「closed」の部分は赤文字で動詞(の過去分詞)として表記されていますが、Be動詞の後には基本、名詞か形容詞、と考えると、この「closed」は形容詞として捉えることもできるワケです。
これがムズかしい文法用語で「過去分詞の形容詞的用法」と呼ばれるヤツですね。
要するにモトは動詞なのだが、それを受け身(過去分詞)にして形容詞のように使用する、と言うことです。
(なので、あえて形容詞は動詞と似ているオレンジを使用しています)
この下の例を見てみると分かりやすいのではないでしょうか?
The store is closed. 「店は閉められた」
The closed store(.) 「閉められた店」
The heart is broken. 「心は壊された」
The broken heart(.) 「壊された心」
「Broken Heart」や「Broken Window」などは歌詞やタイトルなどでもよく見かけるので馴染みがあるのではないでしょうか?
日本語では、あえて「 〜された」と言うことを強調して表現したくない限り、「閉められた店」や「壊された心」と言うより、「閉まった店」「壊れた心」と言う方が自然でしょうが、英語では(動詞で形容する場合)必ず「~された」か「~している」のどちらかで形容されます。
英語の誤表記と言うテーマから外れてしまいますが、この「受け身にされていない間違ったカタカナ語」は日本でよく耳にします。
それはまた別の記事で書きたいと思います。
ちなみに画像でもあるように、英語圏でサインに「closed」を文章で表記する際は「We are closed.」とする方が一般的です。上記例文ではopenとの対比をわかり易くするために「The store is closed」を使用しました。これも間違った文章ではありませんが、「The store is closed」というのは絶対ではありませんが、倒産での閉店や一時的閉鎖の意味に捉えられる可能性もあります。なのであまりサインには使われないのかも知れないですね。日本語の「閉店」「店じまい」も「営業時間外」と「倒産で」のどっちにも捉えられるのと似ていますね。
もっとちなみにの話ですが、私は人生で1度だけアメリカで「Closed」ではなく「Close」のサインを見たことがあります。つい最近に日本のニュース番組ででした。なのでどこの国の人が経営している店かはわかりませんでしたが、それよりどこでそんなサインを手に入れたのか不思議に思いました。
今回この記事に載せる画像を検索していたところ、なんと英語の素材サイトなどでも「Closed」ではなく「Close」のサインが少ないですがいくつか見当たりました。作者はノン・ネイティブと思われますが、ダウンロードして使うネイティブなんているのかな?とさらに困惑…
最近では「アニメ」という言葉が英語でも使われる様に(「アニメ」は「animation」のカタカナ語で英語では「anime」とスペルが変わってしまうので本来は短縮できない)、まさか他にも英語の和製英語化が進んでいるのか?っと思っちゃいました…まさかね。
「~している」で形容する
本題から若干ズレますが、今ちょっと話をした「~している」ですが、
「~している」はまさにその状態が今現在起こっている、要するに-ingの進行形で表します。
-ingの進行形は難しい言葉で言うと「現在分詞」と言う名前になるので(*3) これが「現在分詞の形容詞的用法」と呼ばれるものです。
分かりやす様に上の例文の使っているので、やや不自然な感はありますが、
The store is closing. 「店は今閉まりかかっている」
The closing store(.) 「今まさに閉まりかかっている店
The heart is breaking. 「心は今壊れかかって(壊れている最中)いる」
The breaking heart(.) 「今まさ壊れかかっている(壊れている最中)心」
のように言うこともできます。
このようなことが分かると、今知っている動詞を使って色々なものを形容することが出来るようになり、英語を言葉として捉えられるようになり、英語で表現できるものも格段に増えていきます。
まとめ
間違ったカタカナ語(英語の誤表記)から「過去分詞の形容詞的用法」や「現在分詞の形容詞的用法」まで学んじゃいましたね。
周りにあり溢れている英語やカタカナ語を見て、「これは本当に正しい英語なのだろうか?」と、ちょっとした疑問を持ち、そこから正しい英語、そして表現力を増やしていくと言うのは、ある意味楽しい勉強法の1つではないかと思います。ある意味身近な実体験をもとに覚えるので、机上の勉強よりも身に付くのではないでしょうか?
*1:「VOW」(バウ)は、宝島社が発行する誤植や街で見つけたヘンな看板や標識、誤植などをまとめた雑誌で「VOW天国」は造語。
*2:closeの形容詞で「閉じた」と言う感じの意味でかなり稀に使われることがある。 ただしそれは「密封された」という感が強いことと、ほぼ使われない意味なので、ネイティブは「The store is close.」と聞くと「店は近い」と思ってしまう。
*3:正しくは、動詞の-ing形を「現在分詞」と言い(「動名詞」とも言うがそれはまた別のお話と言うことで…)、「Be動詞+動詞の-ing形」の形で(Be動詞が現在形の場合)「現在進」なる。
そのため一般的に動詞の-ing形が「進行形」と浸透しているので、『「動詞の-ing形」=「進行形」』でもいいんじゃん?っと思ってしまっているカタっ苦しいのが嫌いな私…(と言うか、そう言う細かい分類などを強要するから英語はむずかしいモノとなり話せなくなると思っているので)