英語の発音 -英語の発音に近いカタカナ語なのにネイティブには通じないのはなぜ?-

 今回はこちらの記事「なぜカタカナ英語は通じないのか?」の分類で「3-2 比較的英語の発音に近いカタカナだが、カタカナ発音してしまっているため通じないカタカナ語」と、どうしたら通じるような英語発音にできるかの話をします。


カタカナ表記がそれほど間違っていないはずなのにネイティブには通じないのはなぜか?

 カタカナ表記でそれほど間違っていないものをいくつか紹介してきましたが、 そんな間違っていないはずのカタカナ語もネイティブに通じないことがあります。

 日本人の英語がネイティブに通じない理由としてカタカナ語を使っているからというのがあります。それはカタカナ語が単純に間違った英語であると言うケースもあります。
 しかし例えばカタカナの「カット」のように、決して間違った英語の発音では無いはずなのに通じない、と言うケースがあります。それはなぜでしょう?
 それはきっと単に発音の仕方の問題でしょう。
 ではどうやったらカタカナ語を使って(カタカナ語でなくてもいいんですが」)ネイティブにも通じるような英語っぽい発音にできるのでしょう?
 今回はそんな発音のテーマで話をしたいと思います。

 ちなみに今回の記事は 日本語には存在しない「L・R・V・TH」の発音は取り合えずおいておきます。

まずは日本語の音の特性を知る

 カタカナの発音がネイティブに通じない理由を理解するには、まずは日本語の音の特性と言うものを認識する必要があります。

日本人の名前は(基本)2文字おきに母音が来る

 以前私はあるアメリカ人に、「僕は中国人や韓国人や日本人の名前を見ても、それがどの国の人の名前なのかさっぱりわからないんだ。」と言われました。
 私はアメリカ在住時、日ごろから自分の名前を書くときに何か違和感のようなものを感じていました。それはローマ字で表記していると言う事なのですが、そのアメリカ人の質問の時に初めて全てがクリアになりました。
 私は答えました「中国人や韓国人の名前に関しては詳しい話はできないけれど、日本人の名前は簡単だよ。日本人の名前は全て『子音音+母音』の順番か、もしそうなってなくても『子音+子音』の次には必ず母音が来るから。」と答えました。
 それから暫く経ち、私が英語を教えるようになってからあることに気づきました。 日本人の発音がネイティブに通じないのはその音の違いにある。そして日本語の発音は日本人の名前だけに限らず、全て母音で終わるからだ、と。

母音と子音とは

 一応念のため母音と子音の説明をしておきます。母音とは「あいうえお」のことです。子音とは「あいうえお」以外のすべての五十音の文字です。
 母音は当然英語でも同じで「a・e・i・o・u」で、それ以外のアルファベットは子音となります。
 英語なのでアルファベット順になっていて順番が違うだけで、「あ・a、い・i、う・u、え・e、お・o」と同じです。 当然と言えば当然なのですが。

母音
日本語「あいうえお」= 英語「a・e・i・o・u」

日本語は必ず母音で終わる

 ローマ字表記をすると分かりやすいと思いますが、「Shu」や「Ryo」などと、日本語には必ずしも「子音+母音」とはならず、「子音+子音+母音」という音や、「家」(ie)ように「母音+母音」の音も存在しますが、 日本語の音は全て母音で終わるのです。
 正確に言うと「ん」で終わる単語・文章はのぞいてですが。

みかん 社員 「知らん。」

 なので日本人からすれば母音で終わらない音と言うのは馴染みがなく、とても気持ちが悪く落ち着かないのです。

文字表記するときは

 文字として表記するという面では、「気持ちが悪く落ち着かない」と言うよりも、そのような特性を持つ日本語の文字で表記する以上、足りない母音を足して表記しなければならないのです。

cut→cutto カット hair→heaa ヘアー hotel→hoteru ホテル room→ruumu ルーム

会話でも母音が…

 会話の話になれば、文字表記は関係ないはずなのですが、やはり日本人からすれば母音で終わらない音は「気持ちが悪く落ち着かない」のです。
 よって無意識にかもしれませんが、ほとんどの日本人が英語っぽく話そうとしていても母音を出してしまっているケースが多々あります。
 英語っぽく話そうとしているのならまだしも、それをカタカナ語、要するにすべて母音で終わる発音にしてしまえばネイティブには通じないのは当然ですね。

ネイティブは子音で終わる音に慣れている

 逆に英語ネイティブからすれば母音で終わる単語の方が稀です。彼らは子音で終わる音に慣れているので、その子音で終わるはずの単語に母音がついた形で発音されると、全く別のものに聞こえてしまい理解できないのです。

 例えば「cut」を「カット」と言うと、 ネイティブには「cut toe」(つま先を切る)のように聞こえるでしょう。

英語は破裂音と摩擦音でおわる

 自分では「cut」と言ったつもりなのにネイティブには「cut toe」と2文字になって聞こえてしまう。
 と言う事は逆に「カッ」とだけ言えば「cut」と聞こえるかと言うと、やはりさすがに「カッ」だけではネイティブには通じません。

 その理由の1つは日本人としては「カッ」と言ったつもりがかもしれませんが、その小さい「ッ」は「ツ」 なので「tsu」と「う(u)」が入っている可能性があるということです。(その場合「cuts」と聞こえるかも)


 もしくは、ほぼ、「う(u)」を言っていないのに通じない、というケースもあるかもしれません。その場合は、やはりそこに「cut」の「t」が抜けている。要するに破裂音が抜けているからなのです。これが英語を英語っぽく、というかネイティブに通じる発音にするコツです。
 ネイティブに通じる発音にするには破裂音で終わる音を意識して話すようにする、ということが1つのポイントです。
 話は飛びますが、ネイティブに通じる発音にするもう1つのポイントはアクセント(抑揚)です。

破裂音とは?

 破裂音と摩擦音については、また別の記事で詳しく書くとして、ここでは簡単に説明しておきます。
 破裂音とはその名の通り破裂するような音ですが、爆発のような大袈裟な破裂ではないのです(当然)。息がぶつかり合うような音です。

破裂音:「p」「b」「t」「d」「k」「g」

 上記が破裂音になります。先程の「cut」の「t」もありますね。
 最初の「p」を例として説明すると「pop(ポップ)」という単語の最後の「p」の部分は、カタカナのように「プ(pu)」 と言うのではなく、 日本語でわざと馬鹿にしたように笑う「プっ…」と息を出す様な笑い方がありますね?あの「プっ…」が「p」の「破裂音」になります。

摩擦音とは?

 摩擦音もまたその名の通り、摩擦=擦ったような音のことです。日本語では表記できないので発音記号で表記しますが、

摩擦音:「f」「v」「θ」「ð」「s」「z」「ʃ」「ʒ」「h」

となります。
 「s」「z」が 分かりやすいと思うのでこれらの説明をすると、名詞が複数形になった時のお尻につく「s」や、Do動詞の3人称単数の時に「s」がつくときの発音です。
 例えば「talks」。「トークス」のように「talk +ス(su)」とするのではなく「talk + s」とします。
 実はこの「s」の摩擦音は日本人でも普段から使っているので比較的簡単かと思います。
 「私がします。」の「す」は「ス(su)」ではなく「ス(s)」となっているハズです。
 これに対し「お酢」や「数学」などの「ス(su)」は「ス(su)」になっていると思います。
 「します。」の「す」が摩擦したようになっているのがわかりますか?

通じる英語にするには

 このようにネイティブに通じる英語にするには、日本語発音・カタカナ発音のように母音で終わらせないようにして、破裂音や摩擦音を使うことを心がけることです。
 破裂音や摩擦音を使うということは母音で 終わらせない(子音で終わらせる) と言うことです。
 そのように心がければネイティブに通じる英語になるハズです。


 さて正しい発音にする話は取り合えずこれぐらいにしておいて、最後にネイティブに通じないカタカナ発音の小噺のような話で終わらせたいと思います。

ネイティブに通じないEducationのEd

 「Ed」 と言う単語をご存知ですか?
 男性の名前、Edwardの短縮形として使われ、 日本でもエド・サリヴァン(Ed Sullivan)などは有名かと思います。

 もう一つ「ed」は education の短縮形として使われます。
 最近では、教育(Education)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語「EdTech」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?

 この「ed」ですが、 これまに話した内容を踏まえると、カタカナで表記すると当然「エド」となります。「edo」なので「江戸」になってしまいますね。よって「ed」と正しく言うには、発音も「d」の破裂音で終わらせる必要があります。そうしないと ネイティブには「江戸」に聞こえてしまいます。


 日本ではスカイツリーが出来たあたりから「お江戸ブーム」が起きて、今でも根強い人気があります。 近年では江戸時代と言う大昔にもかかわらず、すごい技術を持っていたと言う事でもしばし話題に出たりもします。
 そんな中、私は先ほどの「EdTech」と言う言葉が日本で使われるたびに、「EdTech」を指すのか「江戸テック(要するに江戸時代の素晴らしいすごい技術) 」を指すのかが分からなくなることがよくあります。
 それというのも、日本のカタカナ発音のせいと言うのもありますが、実はその日本語発音を逆手にとって実際本当に「江戸テック」という言葉が存在するのです。(単純な洒落でというのもあるのでしょうが)

共学を意味する「co-ed」

 ちなみに「education」の「ed」を使った「co-ed」もしくは「coed」という単語があります。これは「co」「一緒」+「ed」で「男女共学」を意味します。
 こちらもカタカナ語発音するとまさに「小江戸」となって、「ed」は「江戸」と訳しても英語とつじつまが合う(意味は違うが)のは面白いな、っと思いました。


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