「字幕スーパー」の「スーパー」って何?テロップやキャプションとの違いと、英語ではどう言うか?
よくテレビで放送される映画に「字幕スーパー」と書いてありますね。
この「スーパー」って何?って 実は私も思っていました。
ここでは「字幕スーパー」の「スーパー」や、字幕と似た感じに使われるテロップやキャプションと言う単語の解説と、それらを英語で何と言うかを解説します。
「字幕スーパー」の「スーパー」とは?
初めて「字幕スーパー」という言葉を意識して見た時、「スーパー」は和製カタカナ語で「なんかすごい字幕、とでも言いたいのかな?」っと一瞬思ってしまいました。
まさかね、っと思い調べてみたら英語の「superimpose(スーパーインポーズ)」から来ていたのです。
「superimpose(スーパーインポーズ)」は「載せる,重ねる」という意味です。
字幕付きの映画は、モトの映画のフィルムの上に字幕を重ねて焼き付けた「字幕版」のフィルムを上映しているのです。
よって「字幕スーパー」と書かれているものは、字幕を重ねて焼き付けたフィルムを流してますよ、という意味になります。
「テロップ」とは
テロップというのは、アメリカの放送局CBSが他の会社と開発した「Television Opaque Projector(テレビジョン・オペーク・プロジェクター)」という商標登録された装置の略語です。
「Television Opaque Projector」を略して「Telop」となります。
元々はこの「Telop」という装置を使用してテレビ映像に文字や絵を入れていたため、日本ではテレビに挿入されている文字や絵をテロップと言うようになりました。
そしてテロップ装置を使わなくなった現代でも、その名残りでテレビ映像に挿入された文字や絵などをテロップを呼んでいます。
「キャプション」とは?
「キャプション」と言う言葉は、日本では「字幕スーパー」や「テロップ」ほどポピュラーではないかもしれませんが、最近よく聞くようになった方もいるのではないでしょうか?
「キャプション」の語源は英語の「caption」で、「タイトル、見出し、説明や、テレビの字幕」などといった意味の単語です。
テレビなどの映像関係においては、字幕全般を指してキャプションと呼ぶ場合が多いです。
「クローズド・キャプション」とは?
その「キャプション」の1種に「クローズド・キャプション」というものがあります。 最近日本でも所々で耳にするようになりました。(って、もう化石化した言葉ですが…)
英語では「Closed Caption」となり、これの頭文字をとって「CC」と表記されます。この「CC」の マークは目にしたことがあるのではないでしょうか?
聴覚障害を持つ人がテレビや映像を楽しむため「キャプション(字幕)」を表示するアメリカで開発された技術です。
アメリカでは1980年から使用されていて、90年代初頭にはクローズド・キャプション機能をつけることが法律で義務化されました。
私がこの「クローズド・キャプション」の存在を知ったのも、ちょうどその頃。
普段家で見ているビデオ(VHS)テープを友人の家で再生すると、なんと、自分の家では何の字幕の表示もされなかった同じビデオが、その友人宅では字幕が表示されているのです!
今のデジタル放送の字幕に慣れている人からすれば何も驚く事は無いのかもしれませんが、当時からすれば画期的な技術でした。
しかもそれがビデオ『テープ』に記録されている!そして字幕のオン・オフをコントロールできると言うのは、ほんとに驚きでした。
英語学習者にとっては神のようなクローズド・キャプション
また当時は今のように簡単にドラマや映画のセリフをどこからでも入手できる時代ではありませんでした。そんな中、ほぼ全てのテレビドラマや映画のセリフが全て英語の字幕で見れるんです!これは英語学習者にとって、とてつもなくありがたい技術でした。
そんな技術が存在していることを知らなかった私は「聞き取るしかない!」と何度もビデオを巻き戻し、ずっとひたすら聞き取る努力を続けていました。
そんな何度も聞き返してたビデオテープも、その友人宅で再生すれば全て英語の字幕で表示されるのです。あの努力と苦労は何だったんだ…っとちょっとショックでもありました。
まあ、その努力があったからこそ聞き取る力がついた、と思うことにしています。
クローズドとはどう言う意味?
「字幕スーパー」や「テロップ」のように、視聴者に選択の余地を与えず目に入ってくる映像上の文字(キャプション)のことを「オープン・キャプション」と呼びます。
この開かれた(誰の目にも入って来る)キャプションに対し、「クローズド・キャプション」は、視聴者がリモコンなどでキャプションを表示する設定をしない限り表示されないので「クローズド」となります。
「クローズド・キャプション」のもう1つのマーク。
「Captioned」となっているように、動詞として使われている。
「字幕スーパー」「テロップ」「キャプション」のまとめ
大まかなまとめ
全て映像の上に表示される文字を表す言葉ですが、ざっくり言うと上記のように「キャプション」は映像上の文字の一般的・全般的な呼び名。
その中で細分化されて「字幕」「字幕スーパー」は映画の字幕。「テロップ」はテレビ番組の字幕、といった分類になります。
また「キャプション」という名前も日本ではそれほど浸透していないため「キャプション」の代わりに「字幕」(「スーパー」なし)という言葉が映像上の文字の一般的・全般的呼び名として使われます。
現代でのやや厳密な分類のまとめ
上記のように「キャプション」は映像上の文字の一般的・全般的呼び名なのですが、近年、デジタル放送によって急速に普及した、「テレビ番組に一緒に流されている字幕」のことをキャプションと呼ぶ人が増えてきました。
「テレビ番組に一緒に流されている字幕(キャプション)」とは「クローズド・キャプション」のように通常は表示されず「字幕」ボタンを押すと表示される半透明の黒い帯の上に表示される文字のタイプの字幕(キャプション)です。
このことから最近では「キャプション」は映像上の文字の一般的・全般的呼び名ではなく、テレビ放送などに一緒に配信されている、すべての音を文字化した番組に「付属」している「文字データ」(通称「字幕放送」の「字幕」)を指すようになってきている傾向もあります。
これに対し、出演者のセリフの主要な部分のみを装飾された太文字で表示される文字(や絵)をテロップと呼びます。
この分類にあえて「クローズド・キャプション」も入れるとすれば、「字幕スーパー」は登場人物のセリフを他の国の言葉の文字で表示したもの。「クローズド・キャプション」は登場人物のセリフをそのままの言語の文字で表示したものと言うことになります。
アメリカとカナダでの使い分け
ちなみにアメリカとカナダでは、
「字幕」は、外国語の会話のように音声は聞こえるが内容を理解できない視聴者を対象に翻訳し文字化されたものを指し、
「キャプション」は音声が利用不能だったり聞きとれなかった場合や、聴覚障害のある人を対象に、すべての音を文字化したものを指す。
という定義があります。
「キャプション」は「すべての音」なので、効果音やBGMなども含まれます。
これはアメリカとカナダのみで、日本を含む多くの国ではこの2つを区別しないで、「字幕」という用語が一般的に使われます。
しかし日本はそこまできちんと定義されていないにしても、アメリカの影響を受けやすい国なので、この定義に沿っている傾向が見られます。
言われてみれば、最近のデジタル放送で「字幕」と書かれたボタンで表示される字幕(キャプション)には『チャイムの音』や『♫音楽♪』といった文字情報も表示されますね。これはアメリカとカナダで言うところの「キャプション」だからです。
そういった実態を考慮すると、やはり最近では「字幕」という言葉が映像上の文字全般を指し、ボタンで表示される字幕は「キャプション」と呼ばれる傾向になっていっているのでしょう。
英語で字幕はなんと言う?
英語で字幕はなんと言う?
英語で字幕のことは一般的に、「subtitle」という単語が使われます。
実際に使用される場合は、「subtitles」と複数形で使われることが一般的です。
なぜ英語の字幕は「subtitles」と複数形?
「subtitle」が複数形になるのは2つのケースが考えられます。
1つ目は、例えばDVDには日本語やフランス語などと複数の言語の字幕が付いていることがあります。このような場合、各言語の字幕を1つの「subtitle」として考え、複数言語の字幕が入っていると言う意味で、「subtitles」と複数形になります。
2つ目は、1つの言語のみの字幕でも、映画の中でには複数のセリフがあります。このセリフ1行が「a subtitle」であり、当然1つの作品の中には複数のセリフがあるので、通常「字幕」の話をするときは単数形ではなく複数形の「subtitles」が使われる、と言うことです。
「字幕スーパー」に対応する英語は?
「字幕スーパー」の「スーパー」が英語の「superimpose」から来ていると言う話をしました。
「superimpose」と言う単語は歴とした英語ですが、英語では言おうと思えば、「superimposed subtitle」と言えない事はないですか、それでは説明臭いので、あえて説明をすような時以外では基本そのような言い方はしません。
「字幕スーパー」、そのものズバリではありませんが、同じように「重ねられた」と言う意味では「subtitle」が動詞として使われ「a subtitled film/movie」と言う使い方はされます。
また口語的に「subtitled」が短縮された「a subbed film/movie」とも言われます。
「テロップ」に対応する英語は?
上記のように「Telop」自体も英語ですが、英語では一般的に「Telop」と言う単語は使われません。その業界に詳しい人ならば当然知っているかもしれませんが、「Telop」はあまり一般的に知られている単語ではありません。テレビ業界の特殊な装置の名前なので当然と言えば当然かもしれません。
では英語で日本のバラエティーなどで見かける装飾された太文字のテロップは何と言うかと言うと、実はそれに対応する英語はないと言えるでしょう。
あえて使うなら「subtitle」や「caption」になりますが、やはり「subtitle」は映画の字幕と言うイメージが強く、「caption」は耳の不自由な人用という印象が強いので、それとは違うと言うことを表現したい場合は、単純に「letters (文字)」や「words」、「characters(文字・記号)」などが使われます。
日本人はやたらとカテゴライズされた名詞を好んで使う習慣がありますが、英語ではあまりそういった傾向がないので、いわゆる日本語の「テロップ」に対応する単語はないと言うことです。
まら、そもそもアメリカのテレビでは日本の「テロップ」のように、「セリフの1部を装飾した文字で出す」といったこと自体が、かなり稀な気がします。
「キャプション」の英語は?
「キャプション」の英語はそのまま「caption」です。
既に何度か説明をしているので繰り返しのようになってしまいますが、「caption」はもともと「タイトル、見出し、説明や、テレビの字幕」といった意味があります。
よって日本語の「テロップ」の代わりに「caption」を使うこともできます。
しかし「Closed Caption」が法的に義務付けられたり、その後「Captionは聴覚障害のある人を対象に、すべての音を文字化したものを指す」と定義付けられたという背景もあり、現代では映像に対して「caption」が使われると「聴覚障害のある人を対象とした字幕」という印象を持つ人が多いです。
よってほとんどのネイティブは、
「subtitle」=「翻訳された映画の字幕」
「caption」=「聴覚障害のある人を対象とした字幕」
と答えるでしょう。
さいごに
以上、日本語の「字幕スーパー」の「スーパー」って何?から始まり、「テロップ」や「キャプション」との違い、そしてそれらを英語ではどう言うか?という解説でした。
時代や技術の変化などもあり、厳密に何を指すかと言うものも変わっていくものでしょう。
「キャプション」という単語がいまいち日本にはそこまで浸透していないので微妙な立ち位置ですが、世代的な感覚もあるかもしれませんが、やはり「字幕」=「翻訳された映画やドラマの字幕」、「テロップ」=「TV番組の文字」というのが、未だに一般的な捉え方だと思います。