もとの意味の一部だけが浸透してしまったカタカナ語 -「スクリーン(screen)」-

 英単語がカタカナ語として取り入れられた際、もとの意味の一部だけが日本に浸透してしまった単語。第3弾は「スクリーン(screen)」です。

 このタイミングでスクリーンの話をするつもりはありませんでしたが、前回の「テスト(test)」で、 スクリーンが登場したことから、今回はスクリーンの話をすることにしました。

 現在日本で「スクリーン」と言うと、ほとんどの人が「映画のスクリーン」や「モニターのスクリーン」といったものを思い浮かべると思います。しかし英語の screen には実に様々な意味があります。


 毎回の話になりますが、単語の意味はそのモトモトの大まかな意味を捉え、そこから派生した意味をなんとなく理解すれば、辞書に載っているようないくつもの定義を覚える必要はありません。

 このことは「おばかさんダリオの話すための英文法」の第13話[答え方を詳しく見てみよう]のおまけ動画「More Practice」でも詳しく解説しています。

 ご興味のある方は下記リンクから。

「おばかさんダリオの話すための英文法」の第13話(Filmuy)

第13話 -More Practice- おばかさんダリオの話すための英文法 [Be動詞疑問文と回答](Amazon)

*FilmuyとAmazonでは配信形式が異なるため、タイトルが若干異なります。
(Filmuyでは「More Practice」は第13話のおまけ特典映像として付属。Amazonでは第13話のみでの配信。)


 ではスクリーンのもともとの意味は何だったのでしょう?

スクリーンのもともとの意味

 screen はもともと、熱や火、隙間風などから守る「遮るもの」を指しています

 さらに少しだけ詳しく内容を見てみると、スクリーンはあるエリアを視界から遮断したり、動物や危険なモノの通過をブロックする仕切りのことです。

 またこの「危険なものの通過をブロックする」ために板状のものや、細い網目状のもの、薄い布状の素材などが使われていました。

名詞としての screen

映画やTVなどの「画面」

 その「遮る仕切り」が板状・シート状だったことから、映画で使用する幕もスクリーンと呼ばれるようになり、テレビの登場でテレビの画面もスクリーンになり、さらにモニターなどのスクリーン等も指すようになりました。 これらが多分皆さんが1番なじみのある、日本語でも使うスクリーンですね。

映画のスクリーンから派生した慣用句

screen ○○

 よって「screen star」とはスクリーン上のスターと言うことで映画スターのことで、「screen test」はスクリーン上のテストで映画のオーディション。 実際に俳優の写り映えをテストすると言うものですね。

screen star 映画スター
screen test 映画・TVのオーディション

on the big screen

「on the big screen」は「映画館で、映画で、映画に出演して」などの意味になります。
「a」ではなく「the」になっているので「映画館で」という意味になります。「a big screen」だと単純に「大画面」という意味になります。

I want to see this on the big screen.
私はこれを映画館で見たい。
He is on the big screen.
彼は出演している。

網目状のもの

 日本でもシルクスクリーンなど有名な言葉だと思いますか、漫画制作などについて知識のある方ならスクリーントーンと言う言葉も聞いたことがあるのでは、と思います。
 シルクスクリーンは絹のようなスクリーン。 見たことのある方はわかると思いますが、網目状になっていて、そこにインクを落として印刷しますね。

 スクリーンのもともとの意味でも述べたようにスクリーンは網目状のものを指すので、細かい網目状のものをスクリーンと呼びます。この事はなんとなくわかっている方が多いのではないでしょうか?

 そういった意味では網を意味するネットと同じような意味で使われたりもします。網戸の英語は「a window screen」です。網戸は英語で他にもinsect screen、bug screen、fly screen、wire mesh、or window netなどと言った言われ方もし、 ここからも分かるようにスクリーンはメッシュやネットと同じように使われてますね。


 ちなみにの話ですが、日本語では網戸と「戸」となっていますが、 日本人の感覚的には窓につけるので英語の「a window screen」はピンとくると思いますが、英語では「a screen door」 と言ったりもします。それは映画などで見たことがあるのではと思いますが、アメリカの住宅の玄関ドアには、よくもう1枚網目状の網戸のようなものが貼ってありますね? あれことです。

危険なものの通過をブロックするもの

 日本語でも「サンスクリーン」 と言うのは有名ではないでしょうか?
 sunscreenは日焼け止めのことですね。
 もともとの「危険なものの通過をブロックするもの」や「遮るもの」から日光を遮るという意味でサンスクリーンとなります。


 また「通過をブロック」したり「遮る」ために薄い膜を張ることもスクリーンする(スクリーンを貼る)と言ったイメージもあるので、まさに「サンスクリーン」はその2つの派生した意味を表す良い例ですね。

動詞としての screen

(映画やTVなどの「画面」に)映す

 先ほどの名詞としての映画やTVなどの「画面」という意味の screen が動詞で使われたものです。
 英語にはこのように名詞と同じような意味でそのまま動詞として使われるものが非常に多いですね。名詞の「test(試験)」が動詞では「test(試験をする)」になる、と言うのもそうですね。

 よって screen は動詞として映画を映す、やテレビに映すといった動詞としても使用されます。

The film will be screened next week.
その映画は来週上映される。

動名詞 screening は「上映,映写」

 このスクリーンを現在分詞(動詞+ing)(動名詞)にすると screening になります。日本語でも実は「スクリーニング」というカタカナ語が使われることがあるのですが、ピンとくるでしょうか? やや特定の業界に限られるかもしれませんが「(映画・テレビなどの)上映,映写」という意味になります。..

We had our first screening of this film last year.
この映画の最初の上映は去年行われた。

網目状のものから→ふるいにかける

 名詞のところでスクリーンは網目状のものと言う話をしました。 網目状の物では「ふるい」などがあります。 ここのことから screen は小麦粉をふるいにかけて落とすようになイメージで「ふるいにかける、 ふるい落とす、選抜する、選考する」と言った意味でも使われます。

 日本語でもそこまで一般的ではありませんが、そういった意味でスクリーニングと使われることもあります。

Are you screening the calls?
君はかかってくる電話のどれを取るかを、ふるいにかけてるのかい?

 これは現在ではあまり使われることのなくなった文章かもしれませんが、電話や留守番電話が通信手段のメインだった頃に実によく使われていた文章です。

 電話を取れるのにわざと取らず留守電に入る声を聞いて相手を確かめてから電話を取る、要するに誰からの電話を取るかをふるいにかけていると言うことです。

 そういった意味では「filter(フィルターをかける・ふるいにかける)」と同じ意味で使われます
 また monitor(監視する)とも若干似た意味を持っていますが、monitor は「動きを見ながらずっとそれと一緒に監視している」という意味があるので、やや別の感じになります。

 ただ、 コンピューターに使用するスクリーンのことをモニターと呼ぶのかスクリーンと呼ぶのか?とよく混乱され疑問に出てくる単語が同じような意味、というのは興味深いですね。(同じような意味だから混乱されるわけだが…) この件はある意味興味深いので、また別の記事で触れたいと思います。

 現在ではスマホなどで誰から電話がかかってきているかすぐに分かるのであまり使われない文章ではありますが、同じようにふるいにかけると言う意味では昔も今も面接などは選考プロセスなので、そちらでも screen と言う言葉は使われます。

We hold interviews to screen applicants.
私たちは応募者を選抜するために面接を行います。

 こちらもカタカナ語に慣れてしまった日本人からすれば、ちょっと不思議な気がするかもしれませんが、面接の英語は「an interview」になります。

 仕事の面接は正式には「a job interview」となりますが「an interview」だけでも面接と言う意味になるので、芸能関係の人でもない限り、一般的にインタビューと言えば仕事の面接を連想します。

動名詞 screening は「選抜、選考」(ふるいにかけ落とす)

 「ふるいにかける」という意味の時でも screening にして「選抜、選考」と言う動名詞としても使用されます。

The screening process may include a variety of elements.
選考工程は実に様々な要素が含まれる。

 面接自体が「ふるいにかけて落とす」と言う、選抜するものなのですが、ワザワザというか、ハッキリとそうだと、面接の前に screening と言う単語をつけてもよく使われます。

A screening interview is a part of the job selection process.
選抜面接は仕事の採用に向けたプロセスの1つです。

危険なものの通過をブロックする

仕切る、区切る、遮る(ブロックする)

 まずは「危険なもの」はとりあえずおいておいてブロックする。

My desk is screened off from the lobby.
私の机はロビーから(ついたてのようなモノで)仕切られている。
The fence screens our house from the street.
フェンスが道(の人目)から家を遮ってくれる。(フェンスが道行く人の目から家を見えないようにしてくれる。)

検査する

 「危険なものの通過をブロックする」と言う意味で医療関係にも使えます。きれいな日本語に訳すと「検査する」となりますが、ふるいにかけて危険なものや悪いものはないかを判断すると言う意味での検査です。

Everyone ages 45 to 75 needs to get screened for colorectal cancer.
45歳から75歳の人は皆、結腸直腸癌の検査(スクリーニング)を受ける必要がある。
People who have routine screenings are more likely to receive an early diagnosis.
定期的な検査(スクリーニング)を受けている人は早期の診断結果を受け取れる可能性が高い。

予診票

 名詞の話になってしまいますが医療関係でついでにもう一つ。
 予診票は「a screening questionnaire」となります。 予診票は何かの治療をするのに、事前に問題がないかスクリーニング(ふるいにかける)するための アンケート用紙のようなものですね。

You need to fill out a prevaccination screening questionnaire for COVID-19 vaccine.
新型コロナのワクチンを受ける前にワクチン用の予診票に記入する必要があります。

集団検診

 ちなみに集団検診のことは「Mass Screening」と言いますが、 今回の新型コロナでの流行で日本語でも「スクリーニング検査」と言う言葉が頻繁に使われるようになりました。 ネット上でも「スクリーニング」と入れるとすぐに出てきます。

例:
新型コロナウイルス感染症に係る集中的検査(スクリーニング検査)…

もう、この3つの違いがわかる?

 スクリーンに関する解説は以上です。下記の3つは別のこちらの記事で紹介した screen と test の2つの単語を使った慣用句です。やや、ややこしい内容かもしれませんが、上記の内容が理解できれば、これもなんとなく理解できるのではないでしょうか?

a screen test →「映画のオーディション」 スクリーン(画面上)のテスト
a screening test →「選抜試験」 ふるいにかけているテスト スクリーニングして行われるテスト
a test screening →「試写」 映写しているもののテスト スクリーニング自体をテストする

 これらの慣用句には「これ」といった法則がないのがある意味難点です。慣用句なので「そういうふうに言われるもの」と言うだけが理由です。

 ある程度の攻略方法はありますが、それはまた別の記事で書きたいと思います。 ただしそれはあくまでも「ある程度」なので、あまり大きな期待をしないように…

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