「頑張って」や応援や励ます時の「ファイト」や「フレー」は英語では通じない?正しい英語は?

 誰かを応援したり励すときに、日本語では「がんばれ!」や「頑張って!」などの言葉が使われます。
 同じようなことを英語で言うにはどうするでしょう?

 まず頭に浮かぶのが、日本でもよく使われるカタカナ語の「ファイト!」や「フレーフレー」 ではないでしょうか?

 しかし、この2つを英語でそのまま言ったのでは意味が通じません。
 英語で実際に励ますときに使う表現はいくつかありますが、今回はこの2つに絞って解説をしたいと思います。

「ファイト(fight)」は意味が違う

 「ファイト!」が通じないと言うのはある程度有名な話かと思います。

 「ファイト(fight)」自体は英語です。では、なぜ通じないのでしょう?
 それは通じないと言うより、別の意味になってしまうからです。

 「fight」は「戦う、喧嘩する」と言う意味の単語です。
 なので英語で「Fight!」と言ってしまうと「戦え!喧嘩しろ!」といった感じになってしまいます。

 また「fight」自体は自動詞なので、「fight」単体で「Fight!」と言う命令形で使うことができますが、実際の会話ではそのように「Fight!」だけで使われる事はまずありません

おばかさんダリオの話すための英文法」(C)Da Rio Productions

なぜ日本語では応援するときに「ファイト!」となった?

 日本語でなぜ「ファイト」が応援するときに使われるようになったのかについては、確証を得られる文献が見つかりません。
 しかし明治時代の日米ボクシングの試合で「ファイティング・ポーズを取れ!」というところから、「ファイト!」と言って応援するようになった、という説が有力のようです。

「フレー」は 発音が違う

 日本では応援団などが「フレー」という言葉をよく使うので、たまに旗を振れの「振れ」=「フレー」だと思っている人もいるようですが、「フレー」は英語の「hooray」もしくは「hurray」がモトとなっています。

 「hooray」も「hurray」も「フレー」と言う「応援の時の声」という面では日本語の「フレー」と意味は同じですが、 「フレー」とは発音が若干違います。

hurray   hʌˈre(米), hʌˈreɪ(英) 「ハロゥ」(米)「フレィ」(英)
hooray   hʊréɪ(米), hʊˈreɪ(英) 「ヒュレイ」(米英)

「hooray」「hurray」の発音を詳しく

 実はこの「hooray」、「hurray」の発音は情報が混乱しています。

 上記で紹介したのは「Weblio英和辞書」で記述されている発音です。
 これが「Cambridge Dictionary」によると、

Cambridge Dictionary
hurray   həˈreɪ(米), həˈreɪ(英) 「ハ(フ)レイ」(米)「ハレイ」(英)
hooray   həˈreɪ(米), həˈreɪ(英) 「ハレイ」(米)「ハレイ」(英)

 となります。

 発音記号が日本のものと若干異なりますが、 目的は注目すべきは全て同じ発音記号になっていることです。

 さらに「hurray」に関しては同じ発音記号になっているにもかかわらず、実際の音声では「米」の「hu」は「ハ」と「フ」が混ざったような中間の発音になっています。
 その他、「hurray」の英も「hooray」の米英も全てほぼ同じ「ハレイ」と言った感じに発音されています。

 Googleでの発音を調べたところ、「hurray」も「hooray」どちらも同じ「ハ(フ)レイ」に近い発音になっています。

結局何が正しい発音なのか

このことから「hurray」も「hooray」も イギリス、アメリカに関係なくどちらも同じ「ハ(フ)レイ」と発音するのが正しいと言えます。

 少なくとも私は「Weblio英和辞書」にあるように、「hooray」を「hʊréɪ((ヒュレイ)」と発音されたのを聞いたことはほぼありません。
 「hurray」の米国発音の「hʌˈre(ハロゥ)」に関しては、耳にしたことはないと思います。

 「hu」も「hoo」も、「ハ」と「フ」の中間の音で発し、「ray(レイ)」にアクセントが来る感じです。

 「hurray」も「hooray」も歓喜の時の掛け声なので、感極まって声を上げて発声するので、その時に「ray(レイ)」にアクセントが来るので、「hu」・「hoo」の発音はそれほど重要では無いかもしれません。

 いずれにせよ日本語の「フレー」とは違う発音ですね。

意味もちょっと違う

 どちらも「フレー」と言う応援の時の声で使われますが、2つの単語にはさらにそれ以上の意味があります。
そして「応援の時の声」という以外の意味でも2つには若干の違いがあります。

hurray
(応援の)フレー、(歓声の)わあ、えいえいおう、万歳
hooray
(応援の)フレー、(喜びを表す)やんややんや、やったー

 どちらも「喜び」や「歓声」なので、「愉快」だという心境を表すと言う意味ではほぼ同じです。

 この意味の違いと下記の「Give three cheers」を考慮すると、日本語の「フレー」は「hurray」の方から来てると言えるでしょう。

「フレー」、「hurray」の使われるタイミングも違う

 上記の意味の「フレー」以外の意味を見て、なんとなく気づいたかも知れませんが、「hurray」が応援の掛け声として使用される場合でも、日本語と英語では使われるタイミングに違いがあります。

 日本では「我張れ」っと相手が何かをやっている途中(過程)で励ますのに「フレー」と言いますが、英語では結果として「万歳!やった!」という感じで、その行動の後に使われます。

「Give three cheers」とは?

 英語には「Give three cheers」という表現があります。
 この「three cheers」とはなんでしょう?

 日本語に訳すと「3つの喜び」と言うところから、きれいに訳すと「三唱」。そこから「万歳三唱」などと訳されます。

 当然アメリカ人は「Give three cheers」 と言われて、「バンザーイ!バンザーイ!」と叫ぶワケはないので、実際の英語では「three cheers」は何を指すのでしょう?

 英語では「Hip,hip,hurray!」という掛け声を3回繰り返すのです。 この3回繰り返すと言うところから「three cheers」というワケです。
 実際は音頭を取る人が 「Hip, hip!」と言うと、周りの人が 「Hurray!」と唱和し, それを3回繰り返す、という感じです。

 ちなみにこの「Hip」は「オシリ」の「Hip」と同じ単語ですが、「喝采などの発声」の「間投詞」としても使用されるのです。

「three cheers」の後ろは「for」

 ちなみに「Give three cheers」なので、次には「to」が来るように思えますが、「for」が使われます。
 「Give」を省略しても使われます。

Give three cheers for Tom! トムに万歳三唱を!
Three cheers for Tom! トムに万歳三唱を!

「Give someone three cheers」と言う形でも使えます。

Give Tom three cheers! トムに万歳三唱を!

 ちなみに「Bronx cheer」というスラングもあります。
 「Bronx cheer」とは、舌を唇にはさんで震動させるブーイングに似た野次のことです。

 Bronx(ブロンクス)とは、ニューヨーク市の中にある地区のことです。
 ブロンクスでのスポーツ観戦時にこのような音でヤジを飛ばしたことに由来しているようです。
 「a/the Bronx cheer(s)」と単数でも複数でも使用できます。

They gave Tom a Bronx cheer. 彼らはトムに野次を飛ばした。

 本題とは外れますが、「give someone the raspberries」というスラングも全く同じ意味です。

They gave Tom the raspberries. 彼らはトムに野次を飛ばした。

日本の「万歳三唱」と「three cheers」がどちらも「3」なのは?

 ちょうど日本語訳で「万歳三唱」というのが出てきましたが、なぜ万歳は三唱するのか?
 「three cheers」も「3」です。

 この2つの異なる言語の、似た場面で使われる表現が同じ「『3』回言う」という、その回数が同じことに何らか因果関係があるのでは?そう不思議に思い少し調べてみました。
 しかしそこには何の因果関係もなく、3回と言うのはまったくの偶然のようです。

なぜ万歳三唱を言うようになったのか?

 「万歳三唱」の起源をざっくりとまとめると、
 長寿を祝う言葉「万歳」を唱える慣習は中国が起源のようです。

 日本で「万歳三唱」が初めて使われたのは、明治22年の大日本帝国憲法の発布の日のことです。
 その時、政府は記念式典へ向かう明治天皇の馬車に向かって祝意を表す表現をどうしようかと悩んでいました。
 それまでの日本には天皇を歓呼する言葉がなかったのです。

 初めは文部省が別の言葉を三唱することを提案しましたが、それに対し東京帝国大学の教授が万歳を使うことを提案し、「万歳三唱」となったようです。

 なぜ初めに文部省が「三唱」にしたのかについては、明確な文献は見つかりませんでした。

 しかし、日本には古くから 「三種の神器」や「三本締め」、「三々九度」のように「3」という数字がお祝いなどに使われてきたので、そこに由来するのでは?と私は思っています。

 ちなみになぜ「3」がお祝いなどに使われてきたのかと言うと、これも中国の陰陽説から来ています。
 陰陽論では奇数は縁起の良い数字とされているからです。

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