おすすめ映画1
Annie Hall アニー・ホール
NYを舞台に、素晴らしい映像美と表現を織り交ぜて綴った大人のラブ・ストーリー
監督ウディ・アレンが自ら演じるコメディアン、アルビー・シンガーと、その彼女アニー・ホール(ダイアン・キートン)。
物語は2人が別れたところから始まる。
過去に起こった様々な出来事が時間軸を行ったり来たりしながらユーモラスに紹介され、それらが折り重なり、話は徐々に現在へと戻ってくる。
アカデミー賞4部門受賞の、ウディ・アレンの最高傑作。
第1回目は私が大好きな(だった?娘との事など色々ありましたからね…)監督、ウディ・アレンの最高傑作、「アニー・ホール」だ。
この作品、「ウディ・アレンの作品の中で1番2番」という話ではなく、私の中では映画史上の中でも1番2番という程のお気に入りだ。ウディ・アレンが乗りに乗っていた頃の中でも、ピカイチの作品だ。
何がイイって、映画という媒体を知り尽くした上で映像で遊びまくっているところなんか、映画好きとしてはたまりません。時間軸の曲げ方でストーリーをつなげ、テーマを組み上げて行くところは、タランティーノもよく使う手法だが、ウディ・アレンの方が知性にあふれていて、なんとも心にしみて、何枚も上手な巨匠的なものを感じる。
その他にも、映画を「勉強」した人がシビれてしまうような表現手法がさりげなく随所に使われている点もこの映画の作品価値をさらに高めている。
音楽の選曲もまた渋い。彼の洗礼された映像を背景にこれまたセンスのいいジャズが流れ、まさに大人の映画っという感じ。
もともとコメディアンの彼なので、本編の至る所で(というか最初っから)ジョークをぶっ飛ばしてます。
彼の得意とするギャグは、言葉を巧みに操り、誰も考えつかなかった独特な言い回しで笑わすジョーク。よって、彼の映画がアメリカでは大ウケなのに対し、字幕で見ざるを得ない日本ではアメリカほどウケない。しかし、この映画のジョークは比較的字幕でも笑えるシーンが多いのではないか、と思う。万が一ジョークが笑えないとしても、映像と話を観るだけでも十分堪能出来る作品だ。
しかし、この映画の偉大なところは、自分はコメディアンというスタンスの上で、大人の恋というものを彼の独特な哲学と映像美とともに語るところにある、とうことも忘れないで欲しい。
またそのジョークが単なるジョークで終わらず、きれいに本作品のテーマと、そしてエンディングへと結びつけているところなんか、鳥肌モンです。
この映画、1977年に制作されたというだけあって、映像(カラーの感じ)が見るからに古い。よって、その手の色合いがダメな人にはキツイかも知れないが、それでも1977年にこれだけの事をやっていたのか?っと驚かされる。本当に映画での遊びが半端ない!
最初のシーンも、「今までこんなオープニング・シーンがあったか!?」っと度肝を抜かされる(最近の『度肝を抜く』という感とは違うので、変に期待するとガッカリするかも?)。
ゲスト出演も豪華。ポール・サイモン、キャロル・ケイン、クリストファー・ウォーケンなどがちょい役で出ているところなんか、やはりウディの腕を買ってのこと、と考えてしまう。(だってポール・サイモンですゼっ!?)
余談だが1971年の「バナナ(Bananas)」という映画なんかでは、日本のドリフがよくやっていたコントの原型的なものが、いくつか登場していた。彼が東西問わず現代のコメディに多大な影響を与えていることは間違いない。
最後にトリビア的な話を1つ。この映画、1977年にアカデミー賞4部門を受賞しているが、授賞式当日ウディ・アレンはロサンゼルスの会場に姿を現さなかった。ジャズ好きの彼は、毎週月曜日には決まってニューヨークの「カフェ・カーライル」というジャズ・クラブでクラリネットを吹いている。授賞式がその月曜日だったため、彼は式には参加せず、その日もニューヨークのジャズ・クラブでクラリネットを吹いていたという。
アメリカ映画を代表する、ハリウッド。そのメイン・ストリームの流れに逆らうかの様に、ある意味地味な、知性と教養に裏づけられた芸術的映画を作り続けるウディ・アレン。式への不参加は、そんなハリウッドに対しての彼の主張のようなものもあったのかも知れない。(本編の中でも彼がカリフォルニアが嫌いと主張するシーンがあるのも、アカデミー賞授賞式の欠席と合わせて考えるとさらに興味深い。)
もうセリフを覚えるくらい何100回と見たけど、これを書いていたら、また見たくなっちゃった。
監督・脚本
配給
公開
上映時間
出演
ウディ・アレン
ユナイテッド・アーティスツ
1977年4月20日(米)1978年1月21日(日本)
93分
ウディ・アレン
ダイアン・キートン
トニー・ロバーツ