セルアニメとは?
セルアニメはセルアニメーション(Cell Animation)の略称。
セルと呼ばれる透明なシートに絵を描き、それを背景の上に重ねて1コマづつ撮影して作られるアニメーションのこと。
「セル」について少し詳しく
「セル」について少し詳しく話すと、セルはセルロイド(celluloid)の略で、この事からセルアニメは英語表記ではCell Animation、もしくはCel Animationとなる。(前者の方が一般的)
後にセルは同様に透明なアセテート(acetate)と呼ばれるモノが使用される様になったが、「セル」という名が定着していたため、移行後も「セル」と呼ばれ続けた。
そういえば私も大学時代はアセテートを使っていた。製造メーカーでも化学者でもないので、2つの詳しい違いはわからない。(アセテートの方が安価)
結局はどちらも透明なシートで、透明であればある意味サランラップでもいいワケだ(あんなフニャフニャなものの上に絵は描けないが…)。
セル画とは
この時セル上に描かれ着色されたたセルのことを「セル画」と言い、ファングッズとしても人気があった。
セルアニメのメリット
セルアニメの最大のメリットかつ特徴は、人物などと背景を別々に描くことだ。
この手法によって制作の手間が大幅に省ける大幅に省ける。
例えば同じセルを教室や屋外の背景の上に使用して、いわゆる使い回しをしてすることができる。
またセルは透明なため、何層にも上に足すことが出来るので、稼働部分のみを別のセルに描くことによって、絵を描く手間を大幅に省ける。
例えばキャラクターの口以外の部分を1枚のセルに描き、口の部分だけを別のセルに書くといった具合だ。
セルアニメの制限
- 塗りはベタ塗り
セルと言う、ある意味プラスチックのようなシートの上に着色をするので、水彩画のように筆を流すように絵の具を伸ばしながら着色することができない。
よって着色は全てベタ塗りとなるため立体感が出しづらい。
この回避策として、影になる部分を別のベタ塗りで表現するという手法がとられている。なおその際、影部分の領域を表す線は黒ではなく影の色と同じ、もしくは同系色で描かれる。
- 線画に隙間はNG
着色時の混乱を避けるタメもあり、線画に隙間を設けることは基本できない。
しかし、ワザと線画の隙間部分に上記の影の指定線のように黒ではない塗りと同色の線を描き、黒の線で囲わない手法をとる場合もある。特に外国のクリエイターは黒の線ですべてをカッチリと囲うことを嫌う傾向がある気がする。
この方法は独特の髪型やヒゲなどを表す時によく使われる。
1972年から1974年に放送された『小さなバイキングビッケ』でもその手法が見られる。(これはドイツとの共同制作だったのも起因しているのかもしれない。絵や背景なども当時の日本人のセンスとは思えないほど、やたらとヨーロッパっぽい。)
現代のようにデジタルで描画されるようになってからは、黒以外の色で線を描くことはそれほど苦にならなくなったが、セル画オンリーの時代には余計な手間がかかるので極力避けられた。
- セルと背景の色感の違い
背景は一般的にポスターカラーやガッシュなどを使用し、水彩画のように描かれるのに対し、セル上の塗りはベタ塗り。その上、セルのテカテカ感がプラスして、背景と動く部分(セル)にある意味一体感がなくなってしまう。
多くの日本人がこの見た目に慣れていることから、それほど違和感を感じる人は少ないが、例えば岩場の背景で1つの岩だけが落ちるシーンなど、その1つの岩だけをセル上に描く必要があるため、明らかに他の岩と異なる見た目になってしまう。
- 背景の視点を変えられない
背景も1枚の紙に書かれているため、例えばカメラの回り込みのように背景を動かすことができない。
現在のアニメのように背景が360°回ったり、カメラのパンとともに背景のパースを変更することもできない。
この回避策として1枚の絵にパースの異なる2つの背景を、うまくツジツマがつくように描く、といった手法が使われることもある。
この手法はジブリ(宮崎駿氏)などの作品で実にうまく使用されているのを見ることがよくある。
現代の「セルアニメ」という言葉
現代ではアニメーション制作はデジタルに移行しているが、このセルアニメの基本的な手法(人物と背景を別)は引き継がれている。
現在制作されているアニメの99.98%がデジタル(もしくは多くの工程でデジタルが使用されている)だが、一昔前、デジタル作品はいかにも「デジタル」(手書きではない)といった見た目だった頃、 いわゆる手書きのアニメーションを称するのに「セルアニメ」という言葉が使われていた。
(セルを使用しない人形アニメなどとも区分けする為などにも使用された)
コンピュータ・アニメや、3Dアニメ、フルCGなどが登場してきた時も、それらと対比するために、一般的なアニメを総称するのに「セルアニメ」という言葉が使われて来た。
この流れが今でも継承されて、実際にセルを使用していないデジタルで制作されたアニメも、いわゆる「一般的なアニメ」と言う意味で「セルアニメ」と呼ばれている。
要するに間違った使い方ではあるが、我々が「アニメ」と言われて真っ先に頭に浮かべる「ドラえもん」や「ワンピース」のような「一般的なアニメ」と言う意味で、現在でも「セルアニメ」と言う言葉が使われていると言うことだ。